彼は壮年のころ、怒り狂う猛牛の角をつかんで、後へ
退くどころか牛をジリジリ押しつけたという程の豪傑であった。
内膳正が流れ弾にあたって倒れたのを機会に、総敗軍の姿となって引き
退く後を、城兵が城門を開いて、慕うて来た。
気の早いものは荷ごしらえをして、いつでも立ち
退くことができるように用心しているものもあった。
自然の幽寂な音楽が遠
退くにつれて、深林の底は再び明るくなった。
彼等は富貴の尊ぶべきを知らず、彼等は官爵の拝すべきを解せず、彼等は唯、馬首一度敵を指せば、死すとも亦
退くべからざるを知るのみ。
其から日一日おなじことをして働いて、黄昏かゝると日が舂き、柳の葉が力なく低れて水が暗うなると汐が
退く、船が沈むで、板が斜めになるのを渡つて家に歸るので。
青年は言葉なく縁先に腰かけ、ややありて、明日は今の住家を立ち
退くことに定めぬと青年は翁が問いには答えず、微笑みてその顔を守りぬ。