ここへ、台所と居間の
隔てを開け、茶菓子を運んで、二階から下りたお源という、小柄の可い島田の女中が、逆上せたような顔色で、
ちょうど街路を一つ
隔てた向かい側に、同じような百貨店の大建築が出来上がり、その開店大売出しが今日だというので、こっちでも負けずに客を取ろうというのであった。
雨が降っても、風が吹いても、川一つ
隔てた藪や林は、心細い響を立て易かった。
それから幾千年かを
隔てた後、この魂は無数の流転を閲して、また生を人間に託さなければならなくなった。
蜘蛛は糸の敷物の下に、いつの間にか蠢き出した、新らしい生命を感ずると、おもむろに弱った脚を運んで、母と子とを
隔てている嚢の天井を噛み切った。
正面は隅田川を
隔てて向う河岸をみたる遠見、岸には葉桜の立木。
荒雄川の急流を
隔てて北方の蝦夷に備えたのであろう。
夏の初め、彼は城下に住むことを厭いて、半里
隔てし、桂と呼ぶ港の岸に移りつ、ここより校舎に通いたり。
げに相模湾を
隔てて、一点二点の火、鬼火かと怪しまるるばかり、明滅し、動揺せり。