刎釣瓶の竹も動かず、蚊遣の煙の
靡くもなき、夏の盛の午後四時ごろ。
白い吹雪が大原の中を、点々と飛ぶ、大きく畝ねる波系が、白くざわざわと、金剛杖に掻き分けられて、裾に
靡く、吹雪は野菊の花で、波系は芒の穂である。
然う謂へば彼の房々とある髪は、なんと、物語にこそ謂へ目前、解いたら裾に
靡くであらう。
嫋やかな、丈長草のやうにいつも地の夢のままになつて、すなほに
靡く。
雫の餘波、蔓にかゝりて、玉の簾の
靡くが如く、頓てぞ大木を樹上つて、梢の閨を探り得しが、鶴が齊眉く美女と雲の中なる契を結びぬ。
二間三間、段々に次第に奧へ深く成ると……燈火の白き影ほのかにさして、目の前へ、颯と紅の簾が
靡く、花の霞に入る心地。