むかし、尾崎紅葉もここへ泊ったそうで、彼の金色夜叉の原稿が、立派な
額縁のなかにいれられて、帳場の長押のうえにかかっていた。
目はその間も
額縁に入れた机の上の玉葱だの、繃帯をした少女の顔だの、芋畑の向うに連った監獄の壁だのを眺めながら。
その装置には、背面を黒い青味を帯びた羽目が※っていて、
額縁の中は、底知れない池のように蒼々としていた。
わざわざ
額縁を一つ買つたから、モトデがかゝつてゐるわけ也。
殊に三角の波の上に帆前船を浮べた商標は
額縁へ入れても好い位である。
がらす砕け失せし鏡の、
額縁めきたるを拾いて、これを焼くは惜しき心地すという児の丸顔、色黒けれど愛らし。
空と、その澄みきつた鏡である河——誇りかに盛りあがつた緑の
額縁に嵌まつてゐる河……なんと小露西亜の夏は、情慾と逸楽に充ちあふれてゐることだらう!