帰る時も
舟から直に本所側に上って、自分の屋敷へ行く、まことに都合好くなっておりました。
広い河岸には石垣の間に
舟虫の動いているばかりだった。
現に僕の家の女中などは逆まに
舟の映ったのを見、「この間の新聞に出ていた写真とそっくりですよ。
尾生はやや待遠しそうに水際まで歩を移して、
舟一艘通らない静な川筋を眺めまわした。
それに、烏江の亭長は、わざわざ迎えに出て、江東へ
舟で渡そうと云ったそうですな。
さすれば内裡の内外ばかりうろついて居る予などには、思いもよらぬ逸事奇聞が、
舟にも載せ車にも積むほど、四方から集って参るに相違あるまい。
彼はそれから独り海辺へ行つて、彼等を乗せた
舟の帆が、だんだん荒い波の向うに、遠くなつて行くのを見送つた。
雨のそぼ降る日など、淋しき家に幸助一人をのこしおくは不憫なりとて、客とともに
舟に乗せゆけば、人々哀れがりぬ。
かかる時浜には見わたすかぎり、人らしきものの影なく、ひき上げし
舟の舳に止まれる烏の、声をも立てで翼打ものうげに鎌倉のほうさして飛びゆく。
堤の下で「お乘なさい」と言つたぎり彼は
舟中僕に一語を交へなかつたから、僕は何の爲めに徳二郎が此處に自分を伴ふたのか少しも解らない、然し言ふまゝに
舟を出た。