田宮夫人がこの温泉宿の長い
馴染客であることは、私もかねて知っていた。
「今そこでお逢いなすった二人連れ、あれは久しい
馴染なんですよ。
ここの理髪店の主人は、そのむかし神田に床を持っていて、半七老人とは江戸以来の
馴染であるので、ここらへ来たときには立ち寄って、鋏の音を聴きながら昔話をする。
殊に今度の小説は『由井正雪』で、わたくし共にもお
馴染の深いものですから、毎朝の楽しみにして読んでいます」
かの飴屋もその一人で、半七老人とは芝居でのお
馴染であることが判った。
私は微かな好奇心と一種
馴染の気持から彼らを殺したりはしなかった。
その夜、故郷の江戸お箪笥町引出し横町、取手屋の鐶兵衛とて、工面のいい
馴染に逢って、ふもとの山寺に詣でて鹿の鳴き声を聞いた処……
此の度お聞きに入れまするは、業平文治漂流奇談と名題を置きました古いお
馴染のお話でございますが、何卒相変らず御贔屓を願い上げます。
母「はてな嬢ももう年頃、外に何も苦労になる事はないが、店の手代の粂之助は子飼からの
馴染ゆえ大層仲が好いようだが、事によったら深い贔屓にでもしていはせぬか知ら」
老妓は、生きてる人のことは決して語らないが、故人で
馴染のあった人については一皮剥いた彼女独特の観察を語った。