介在物を混えずに一本の思想を
ひたむきに押通している。
恐らくドストエフスキーであつたら恋といはず友愛といはずただ/\人間関係としてのその各々に
ひたむきに食ひこんでいつたであらう。
しかし、「生活の美しさ」とは、人間の宿命をはらんで、
ひたむきに幸福を追求する努力と苦しみとの表現であらう。
その間に針目博士——いや、まだ博士にはなっていない針目左馬太学士は、大学の研究室を去って、みずから針目研究室を自分の家につくり、
ひたむきな研究に没頭した。
それだけに本物であり、そしてまた本物であるだけに、わざとらしい見せ掛けがなく、
ひたむきにうぶであり、その点に私は惹きつけられたのだ。
そして人びとは誰一人それを疑おうともせず
ひたむきに音楽を追っている。