この頃は
乗合自動車が通うようになったが、その時代にはがたくりの乗合馬車があるばかりだ。
乗合自動車の休憩時間に、逃亡を目撃した運転手は暇な人々に取り囲まれて同じ話を連日繰返してゐる。
それから途中まで
乗合自動車で、最後の一里ばかりは徒歩である。
省線電車の中に並んだ女達が慎ましく膝の上に揃えた指、
乗合自動車の吊り革を掴む女達の指。
荷馬車やトラックや、
乗合自動車などの往来のはげしいために、ところどころ穴さえ開き、洪水でもやって来れば、ひとたまりもなく流失しそうだった。
『第一、電車の音や、
乗合自動車の音だけでも奴等にとつては大威嚇でせう』
去年の休戦当時にも斯うした例があるので、交通機関の
乗合自動車は宵から賢くも運転を止めてしまったらしく、そこらに一台もその姿を見せなかった。