此人は将棋家元大橋家の最後の人たる大橋宗金から、初段の
免状を貰つてゐると云ふ珍らしい人だつた。
外交官崩れのやうでもあり、新聞社関係のやうでもあり、そのくせ、医者の
免状を持つてるともいひ、参謀本部の廻し者みたいな口ぶりでもある、といふ風な、変な人物さ。
つまり、卒業
免状乃至は何々といふ肩書を見せに国へ帰ることが「学成り志を達した」ことだといふやうな気風です。
道子がそのひと達を玄関まで見送って、部屋へ戻って来ると、壁の額の中にはいっている道子の卒業
免状を力のない眼で見上げていた喜美子が急に、蚊細いしわがれた声で、