使い残りの小材木や根太石も
其の辺に積み重ねられている。
若しや此の女は何か護謨ででも拵え屈伸自在な仮面を被って居るのでは無かろうか、併し
其の様な巧みな仮面は未だ発明されたと云う事を聞かぬ。
其の邪を罵り、俗を嗤ふや、一片氷雪の気天外より来り、我等の眉宇を撲たんとするの概あり。
藤「お宅の姉さんのお久さんは宅へ来ておいでなさいますよ、
其の事に就いてお内儀さんが貴方に御相談があるので」
其の儘戸外へ飛出して直に腕車に乗り、ガラ/\ガラ/\と両国元柳橋へ来まして、
喜「熱い時分ならそれで宜いが、寒い時分には二合じゃア足りねえ、ようお前能く己の面倒を見て可愛がって呉んな、
其の代り己がお前を可愛がって遣る事もあらア」
すると子飼から居る粂之助というもの、今では立派な手代となり、誠に優しい性質で、
其の上美男でござります。
其の裡に漸く、譲吉の世話になって居る、近藤夫人の好意になる背広が、出来上ったのであった。