薄田氏は予言者モオゼのやうにその
原野の土を踏まなかつたかも知れない。
一脈故郷の空や、
原野と、ながめの相通ずるものがあるがためである。
まことに、そこ一帯の高原は、
原野というものの精気と荒廃の気とが、一つの鬼形を凝りなしていて、世にもまさしく奇異な一つに相違なかった。
わけても、その
原野の正確な擬人化というのが、鬼猪殃々の奇態をきわめた生活のなかにあったのである。
文士の前にある戦塲は、一局部の
原野にあらず、広大なる
原野なり、彼は事業を齎らし帰らんとして戦塲に赴かず、必死を期し、原頭の露となるを覚悟して家を出るなり。
我は荒漠たる
原野に名も知れぬ花を愛づるの心あれども、園芸の些技にて造詣したる矮少なる自然の美を、左程にうれしと思ふ情なし。
坦々たる古道の尽くるあたり、荊棘路を塞ぎたる
原野に対て、これが開拓を勤むる勇猛の徒を貶す者は怯に非らずむば惰なり。
此間十里見通しの
原野にして、山水の佳景いふべからず。