風の音、蘆の音、水の音、——それからどこかでけたたましく、蒼鷺の
啼く声がした。
ある時は、遠近の一番鶏が
啼く頃になっても、まだ来ない。
春の夜の曹司はただしんかんと更け渡って、そのほかには鼠の
啼く声さえも聞えない。
ここらは取り分けて霜が多いと見えて、高い堤の枯れ草は雪に埋められたように真っ白に伏して、どこやらで狐の
啼く声がきこえた。
この仏法僧鳥は高野山に
啼く霊鳥で、運好くば聴ける、後生の好くない者は聴けぬ。
唯、どこかで蒼鷺の
啼く声がしたと思つたら、蔦葛に掩はれた木々の梢に、薄明りの仄めく空が見えた。
時々は宮のまはりにある、柏の林に歩みを運んで、その小さな花房の地に落ちたのを踏みながら、夢のやうな小鳥の
啼く声に、耳を傾ける事もあつた。