墓標は動かず、物いわねど、花筒の草葉にそよぐ夕風の声、否とわが耳に
囁くように聞ゆ。
この男は目にかかる物を何でも可哀がって、憐れで、ああ人間というものは善いものだ、善い人間が己れのために悪いことをするはずがない、などと口の中で
囁く癖があった。
土方が万理小路の耳に
囁くと、万理小路は役者の背中の上から太い声で、
このまま室を出ていった方が恥を曝さないですむぜ、と
囁く声が聞えるようであった。
と、かすかな砂煙の中から
囁くような声が起って、そこここに白く散らかっていた紙屑が、たちまちアスファルトの空へ消えてしまう。
いかにも不思議な静けさなので、誰でも物を言ふに中音で言ふか
囁くかせずにはゐられない。
その男はひそ/\と
囁くやうに話してゐたが、その話の間にも、口を左右に、またぐる/\と歪める癖があつた。