ただ野田山の
墳墓を掃いて、母上と呼びながら土に縋りて泣き伏すをば、此上無き娯楽として、お通は日課の如く参詣せり。
吾等は生存競争、金力万能の風潮に溺るゝことを怖れつゝ、尚ほ吾等を生んだ土地を耕やして、美しい
墳墓までも用意しやうと執着して居る。
尤も多く保守的なるとき、尤も多く固形的なる時、国民は自然に
墳墓を眺めて進みつゝあるなり。
墳墓の外吾人に休神せしむる者終に之なからんか、吾人即ち止まむ。
悠々たる天と、※々たる地の間に孰れの所にか
墳墓なる者あらんや、其の之あるは、人間の自から造れる者なり、国民の自から造れる者なり。
宇内を睥睨し、日月を叱※せし、古来の英雄何すれぞ
墳墓の前に弱兎の如くなる。
累々たる
墳墓の地、苔滑らかに草深し、もゝちの人の魂魄無明の夢に入るところ。
彼らは皆その住み慣れた祖先
墳墓の地を捨てて、勇ましくも津軽の海の速潮を乗りきった。