詩句と歌詞とを並べた新撰万葉集や、古今集の前名を「続万葉集」と言つた事
実や、所謂古万葉集の名義との間に、何の関係も考へずにすまして来てゐる。
この物語の真
実や、真味は、さういふことに一向かまはないで作者の意図に登り、そして読者に語られようとしてゐます。
殊に近頃は見越しの松に雪よけの縄がかかったり、玄関の前に敷いた枯れ松葉に藪柑子の
実が赤らんだり、一層風流に見えるのだった。
実を云えばその瞬間、私は驚愕——と云うよりもむしろ迷信的な恐怖に近い一種の感情に脅かされた。
実を云うとさっきこの陳列室へはいった時から、もう私はあの時代の人間がみんなまた生き返って、我々の眼にこそ見えないが、そこにもここにも歩いている。
それは、曾て、抽象的に考えられたような、真
実や、美は、そのまゝ何処にも存在するものでないと知ったがためである。
従つてわたしは歴史的事
実や地理的事
実を顧みないであらう。
そこには又赤い柿の
実が、瓦屋根の一角を下に見ながら、疎に透いた枝を綴つてゐる。
或温泉にゐる母から息子へ人伝てに届けたもの、——桜の
実、笹餅、土瓶へ入れた河鹿が十六匹、それから土瓶の蔓に結びつけた走り書きの手紙が一本。
そこにはまた赤い柿の
実が、瓦屋根の一角を下に見ながら、疎らに透いた枝を綴っている。