十三
弦のことよくひき、十四歳の時皆傳いたし申候よし。
ジプシイの郷愁がすすり泣くようなメロディとなって、
弦から流れた。
小指の尖で、中身をポンと落しメリメリと外箱を壊して裏をひっくりかえすと、
弦吾はポケットから薬壜を出し、真黄な液体をポトリポトリとその上にたらした。
「
弦三は、アノまだですが、今朝よく云っときましたから、もう直ぐ帰ってくるに違いありませんよ」
空が曇っているから、海は煮切らない緑青色を、どこまでも拡げているが、それと灰色の雲との一つになる所が、窓枠の円形を、さっきから色々な
弦に、切って見せている。
彼等の弓の林の中からは、勇ましい
弦の鳴る音が風のように起ったり止んだりした。
たゞこの平凡な一句でも自分には百万の火箭を放つべき堅固な
弦だ。
いや
弦振動の発生をたのしむに非ず、文王の声の波動を期待するのにあったろう。
ただこの平凡な一句でも自分には百萬の火箭を放つべき堅固な
弦だ。