怒濤をくぐつて舟を漕ぎ出すとき、舟は小山のやうな浪の中に時々かくれて又現はれる、漕手は恐れげもなく
愉しさうに漕いでだんだん遠く出て行く景。
心に泛ぶこともないので、明日からは断々乎として訪問を止さうと、私は頻りに其の
愉しさを思ひはぢめるのであつた。
そして老婆の悪口と冷笑を一くさり見聞すると、私は丁寧に一礼して、心
愉しい人のやうに帰りはぢめるのであつた。
そして諸君、その悪魔が屈託して夢をみたりするといふなら、こんな滑稽な
愉しい話はないではないか!
歳子は落付いてはゐられない
愉しい不安に誘はれて内玄関から外へ出た。
しかも、自然詩人たる温雅な風懐をその論述のなかにさへみるのは甚だ心
愉しいものである。
私は目下横溝氏の「獄門島」を愛読しているが、我々読者の休養のひとときに
愉しいゲームを与えてくれる名作の続々たる登場を希望してやまない。
自分の掌のなかに彼女の手を把り緊めていると、わたくしのこの胸には、それまで想像だもしなかったほどの
愉しい気持ちが漲って来るのでした。