暑さと疲労とに、少年はものも言ひあへず、纔に頷きて、筵を解きて、笹の葉の濡れたるをざわ/\と
掻分けつ。
だから、当直に叩き起された所長の東屋氏とわたしは、異変と聞くやまるで空腹に飯でも
掻ッこむような気持で、そそくさと闇の浜道を汐巻岬へ駈けつけたのだった。
もののあわれどころより、雲を
掻裂きたいほど蒸暑かったが、何年にも通った事のない、十番でも切ろうかと、曾我ではなけれど気が合って歩行き出した。
湖と、船大工と、幻の天女と、描ける玉章を
掻乱すようで、近く歩を入るるには惜いほどだったから……
時に、妙法蓮華経薬草諭品、第五偈の半を開いたのを左の掌に捧げていたが、右手に支いた力杖を小脇に
掻上げ、
叢の中を歩く時などは、彼は、右手に握った坏で、雑草を
掻分けながら、左の手からは、あまり好きでも無い刻煙草を吸う鉈豆煙管を、決して離した事が無かった。
車夫のかく答へし後は語絶えて、車は驀直に走れり、紳士は二重外套の袖を犇と
掻合せて、獺の衿皮の内に耳より深く面を埋めたり。
長く濃かった髪は灰色に変って来て、染めるに手数は掛かったが、よく手入していて、その額へ垂下って来るやつを
掻上げる度に、若い時と同じような快感を覚えた。