倶利伽羅を仰ぐと早や、名だたる古戦場の面影が眉に迫って、驚破、松風も鯨波の声、山の緑も草摺を
揺り揃えたる数万の軍兵。
この声の行くところ、水と、石と、樹と、調子を合せて、谷間の客を
揺り起す。
堀尾一等卒は苦々しそうに、肩の上の銃を
揺り上げた。
と、いうことは素気ないが、話を振切るつもりではなさそうで、肩を一ツ
揺りながら、鍬の柄を返して地についてこっちの顔を見た。
すると、今し方通った川蒸汽の横波が、斜に川面をすべって来て、大きく伝馬の底を
揺り上げた。
「どうして、どうして、こればかりは決して法螺のほの字もねえんで……」と、熊蔵はまじめになって膝を
揺り出した。
展望の北隅を支えている樫の並樹は、ある日は、その鋼鉄のような弾性で撓ない踊りながら、風を
揺りおろして来た。
頭上の紫藤は春日の光りを
揺りて垂れ、藤下の明子は凝然として彫塑の如く佇めり。