そして、
旅宿に二人附添った、玉野、玉江という女弟子も連れないで、一人で密と、……日盛もこうした身には苦にならず、町中を見つつ漫に来た。
越前の府、武生の、侘しい
旅宿の、雪に埋れた軒を離れて、二町ばかりも進んだ時、吹雪に行悩みながら、私は——そう思いました。
しかるにここに不思議な事には、反徒の頭目由井正雪を駿府の
旅宿で縛めようとした時だけは、幕府有司のその神速振りが妙にこじれて精彩がなかった。
一箇月、食事附百フランで置いて貰った家庭
旅宿から毎日地図を頼りにぼつ/\要所を見物して歩いているうちに新吉にとっては最初の巴里祭が来てしまった。
私が、今ここでこの一文を綴つてゐる時、その友は、すぐそこの、汀続きの熱海の
旅宿で、例の魅力ある小説の想を練つてゐる筈である。
江戸を出るときに用意した百両に近い大金も、彼が赤間ヶ関の
旅宿で、風邪の気味で床に就いた時には、二朱銀が数えるほどしか残っていなかった。
今朝芝口の
旅宿を尋ねると、翁は既に身支度を調へて居り、幸徳の手から奏状を受取ると、黙つてそれを深く懐中し、用意の車に乗つて日比谷へ急がせたと云ふ。
越前の府、武生の、侘しい
旅宿の、雪に埋れた軒を離れて、二町ばかりも進んだ時、吹雪に行惱みながら、私は——然う思ひました。
かれこれするうちに辻は次第に人が散って、日中の鐘が鳴ると、遠くから来た者はみな
旅宿に入ってしまった。