脳貧血を起した伝吉のやっと穴の外へ這い出した時には、もうただ芽をふいた桑の
根がたに伝三の死骸のあるばかりだった。
やや長めな揉み上げの毛が、かすかに耳の
根をぼかしたのも見える。
この桃の枝は雲の上にひろがり、この桃の
根は大地の底の黄泉の国にさえ及んでいた。
ただその側の杉の
根がたに、縄が一筋落ちて居りました。
一つの
根から芽の二本出た、その二本芽の百合と云うやつは容易に見つからない物だったのである。
昼見るといつも天主閣は、蓊鬱とした松の間に三層の白壁を畳みながら、その反り返った家
根の空へ無数の鴉をばら撒いている。
それ程彼女の胸の中には、愉快なる不安とでも形容すべき、一種の落着かない心もちが
根を張つてゐたのであつた。
殊に日が暮れてからは、摩耶颪なり水の上なり、流石に北国生れの若侍も、多くは歯の
根が合はないと云ふ始末であつた。
枯蘆の
根にはすすけた泡がかたまって、家鴨の死んだのがその中にぶっくり浮んでいた。
五軒目には人が住んでいたがうごめく人影の間に囲炉裡の
根粗朶がちょろちょろと燃えるのが見えるだけだった。