震前の一般社会の一切の事象を観るに、実に
欠けてゐたものは、恐懼修省の工夫であつた。
ただし五十本が一本
欠けても駄目ですよ、それをお忘れのないように——と言った。
悪い雲が低く傾いて、その
欠け間から月を見せる、立木の腹が、夜光の菌でもあるように、ボーツと白く明るくなった。
それは大口を明いて笑う幼童の歯並が、或るときは味噌ッ歯だらけで前が
欠けていたと思うのに、或るときは大きい前歯が二本生え並んでいたことがあった。
これまでの日本人には大変科学知識が
欠けていたし、今でも科学知識の摂取を非常に苦しがっている。
一方公卿の方にも、此等の粗野ではあるが単純な武家に対して、寛容さを欠いて居たし、之をうまく操縦する方略にも
欠けていた。
ただ、咄嗟の際にも私の神経を刺戟したのは、彼の左の手の指が一本
欠けている事だった。
その生活といい、実行といい、それは学者や思想家には全く
欠けたものであって、問題解決の当体たる自分たちのみが持っているのだと気づきはじめた。
潮遠く引きさりしあとに残るは朽ちたる板、縁
欠けたる椀、竹の片、木の片、柄の折れし柄杓などのいろいろ、皆な一昨日の夜の荒の名残なるべし。