源内法師の居間には、髪の毛を焼いたらしい不気味な臭ひが
漂うてゐた。
鼻のさきに
漂う煙が、その頸窪のあたりに、古寺の破廂を、なめくじのように這った。
エーテル波の
漂う空間の声! 僕はそれを聞いていることにどんなに胸を躍らして喜んだことでしょう。
彼らが戦場における陰惨な苦しい過去を考えると、ガラス窓を通して、病室のうちに
漂うている平和な春の光が、何物よりも貴く思われるのであった。
旅の心が伴ふ危険や煩ひをすつかり、同行者が負担してくれるだけでも、尖つた寂しさではなく、何かかう、円かな寂けさと謂つたものが、心に
漂うて居ることが多い。
それは室内に
漂う寒さと戦いつづけている証拠だった。
供奉の武将達も、或は河内に、或は伯耆に、北条氏討滅の為にあらゆる苦悩を味った訳であるから、此の日の主上及び諸将の面上に
漂う昂然たる喜色は、想像出来るであろう。
所が三月十四日のこと、前夜の濃霧の名残りで、まだ焼色の靄が上空を
漂うている正午頃に、その橋を、実に憂欝な顔をして法水麟太郎が渡っていた。
雲、童をのせて限りなき蒼空をかなたこなたに
漂う意ののどけさ、童はしみじみうれしく思いぬ。