身毒は、細面に、女のやうな柔らかな眉で、口は少し大きいが、赤い脣から
漏れる歯は、貝殻のやうに美しかつた。
黙つて水の面を眺め乍ら、自分は向ふ岸の新しい二階から
漏れる長唄の三味線の音を聴き澄んだ。
海上には数千の小舟を敷きつめて待ちぶせてゐたから
漏れる隙間はなかつた筈だが、次兵衛の姿はなかつた。
暗く雨降る夜、家を出て四条河原にかゝると、南に火の
漏れる茅屋がある。
ものをいうたびに、欠けた前歯の隙間からチヨロチヨロ舌の先がみえ、そこから呼吸が
漏れるとみえて、発音がはなはだ明瞭でない。
しかし彼等の生活も運命の支配に
漏れる訣には行かない。
直経百海里にもわたるこの大渦流水域を称して、「海の水の
漏れる穴」とはよくぞ呼んだりだ。
昼過ぎになると戸外の吹雪は段々鎮まっていって、濃い雪雲から
漏れる薄日の光が、窓にたまった雪に来てそっと戯れるまでになった。