吉五郎は万吉と清七と三人づれで忠蔵の店へ行って、鼻紙袋や
烟草入れなどを注文した。
入違つて這入つて来たのは、小倉の袴を胸高に穿締めまして、黒木綿紋付の長手の羽織を着し、垢膩染たる鳥打帽子を被り、巻
烟草を咬へて居ながら、書生「ヤー御免なさい。
ゆったりと坐って
烟草を二三服ふかしているうちに、黒塗の膳は主人の前に据えられた。
ここは、往年のカフエ・ミネルワを聯想せしめるところであつて、
烟草のけむりもうもうと立ちこめ、人ごゑが威勢よく起る間に、静に西洋将棋を楽しんでゐる者もゐる。
大火鉢のまはりには門弟の津村彌平次、犬塚段八、三上郡藏の三人が稽古を待つ姿にて、
烟草をのんでゐる。
一個の佛像、さびしげに壇上に殘れるのみにて、堂のあばらなるが、柱と柱との間に繩を引きて、
烟草の葉をほせるなど、佛縁つきて既に久しきを知るべし。