残らず捨て去ってしまったり、
珍味だということをなんにも知らない輩に、むしゃむしゃ食べさせてしまうのはもったいないかぎりである。
ここに林のごとく売るものは、黒く紫な山葡萄、黄と青の山茱萸を、蔓のまま、枝のまま、その甘渋くて、且つ酸き事、狸が咽せて、兎が酔いそうな
珍味である。
籠に入れた鮎が腐る恐れがあるとすれば、鮎を出して二枚に割き薄く塩して、河原の石にはり付け日光に晒して干物とすれば
珍味として賞玩するに足りる。
しかし今では釜無川の鰍も笛吹川の鰍も
珍味とはいえない。
特殊のものに、あかえい・なまず・たこなど、ややグロなものがあるが、まずは下手
珍味の類に加うべきである。
それゆえにこそ、名実ともに
珍味に価すると言えよう。