野童も外套の袖をはねのけて、すわといえば私の加勢をするべく身構えしていると、相手はむやみに逃げるのも不利
益だと覚ったらしく、無言でそこに立ちどまった。
到底も無
益だとグタリとなること二三度あって、さて辛うじて半身起上ったが、や、その痛いこと、覚えず泪ぐんだくらい。
何をしてやつても、受けた利
益だけは有難く思ふが、それを与へた人間に心から謝するといふ気持がない。
よしや一斗の「モルヒ子」に死なぬ例ありとも月夜に釜を抜かれぬ工風を廻らし得べしとも、当世小説の功徳を授かり少しも其利
益を蒙らぬ事曾て有るべしや。
又滝川左近将監一
益も、武蔵野に於て、北条左京大夫氏政と合戦中であったが、忽ち媾和して、尾州長島の居城に帰った。
いや、そう云う内にも水嵩は
益高くなって、今ではとうとう両脛さえも、川波の下に没してしまった。
古は先生の胸中に輳つて藍玉愈温潤に、新は先生の筆下より発して蚌珠
益粲然たり。
爾来予の明子に対する愛は
益烈しきを加へ、念々に彼女を想ひて、殆学を廃するに至りしも、予の小心なる、遂に一語の予が衷心を吐露す可きものを出さず。
さるほどに、山又山、上れば峰は
益累り、頂は愈々聳えて、見渡せば、見渡せば、此處ばかり日の本を、雪が封ずる光景かな。