「衣食足りて
礼節を識る」は今日においても真実の言だ。
例えば、風俗交際のごとし、精神気質のごとし、人物人品のごとし、徳義のごとし、
礼節のごとし。
それに対処する方法は、親しんで狎れず、といふことで、一定の距離を置き、その距離を
礼節で填める方法だつた。
小林氏の如く「芝居小屋全体の
礼節」に愛想をつかすことはまだ早いし、真船氏の如く、作家として舞台に冷淡な顔を向けることも、日本に於ては、再考の余地があると思ふ。
但し、
礼節の範囲に於て批評の自由は保たれ、一座を白けさせない程度に「天狗」たることは妨げない。
品位のある言葉とは、要するに、その人の「高い教養」から発する「矜持」の現はれであつて、己れを識り、相手を識り、
礼節と信念とを以て、真実を美しく語る言葉である。
僕のような、
礼節になれない人間には、至極便利である。