かれは通称を定蔵といって、先年大阪で入墨の上に重敲きの仕置をうけた者で、
窃盗の常習犯人である。
「
窃盗とは考えられぬが、とにかく珍しいものがあったらそういってくれたまえ」
先月の六日の第一回の裁判を受け、女と共に他の
窃盗人殺印鑑偽造等の囚徒達と因人馬車に同車して市ヶ台の未決監に送られたのも事実です。
いちばん最初の事件は……なんでも、芝神明の生姜市の頃でしたから、九月の彼岸前でしたかな……刑事部の二号法廷で、ちょっとした
窃盗事件の公判がはじまったんです。
窃盗か何かでつかまって、警察、警視庁、検事局と、いずれも初犯で通して来たその男は、とうとうこれで前科四犯ときまってしまった。