実際その夥しい木賊はNさんの言葉に従えば、「
胡麻竹を打った濡れ縁さえ突き上げるように」茂っていた。
ことに門の上の空が、夕焼けであかくなる時には、それが
胡麻をまいたようにはっきり見えた。
「まさか、
胡麻の蠅じゃあるめえ」と、半七はまた笑った。
だが、そろそろとその青かった月代が、
胡麻黒く伸びかかって来ると、やはりよくない。
殊に門の上の空が、夕燒けであかくなる時には、それが
胡麻をまいたやうにはつきり見えた。
ごんごん
胡麻は老婆の蓬髪のようになってしまい、霜に美しく灼けた桜の最後の葉がなくなり、欅が風にかさかさ身を震わすごとに隠れていた風景の部分が現われて来た。
一度新技巧派と云ふ名が出来ると、その名をどこまでも人に押しかぶせて、それで
胡麻をする時は
胡麻をするし、退治する時は退治しようとするんですからな。
「今日はどうしたね」と夕方つい出會いがしら問いかけでもしたら、彼はにたにたしながら
胡麻鹽の蓬頭をくさくさ掻き立てる。
年のころは四十ばかり、
胡麻白頭の色の黒い頬のこけた面長な男である。