それを忠実に勤めて来た母親の、家職のためにあの無性格にまで晒されてしまった便りない様子、
能の小面のように白さと鼠色の陰影だけの顔。
「生ッ白い面しやがって、やさしいばかりが
能じゃないぞッ。
実あ、だんなにしかられるかもしれませんが、このけっこうな春先に、いい年のわけえ者が、
能もなくひざ小僧抱きかかえて寝ちまうのももってえねえと思いましたからね。
金助は朝起きぬけから夜おそくまで、背中をまるめてこつこつと浄瑠璃の文句を写しているだけが
能の、古ぼけた障子のようにひっそりした無気力な男だった。
此果断と云ひ抗抵と云ひ、総て前提の「物ふるれば縮みて避けんとす我心は臆病なり云々」の文字と相撞着して并行する
能はざる者なり。
然れども吾人は其理由を聞かずんば其説に承服する
能ざるなり。
否、たゞに要せざるのみならず、爾き不快なる文字はこれを愛の字典の何ペエジに求むるも、決して見出すこと
能はざるに至るや必せり。
予はこの画の如き数分の彼女を、今に至つて忘るる
能はず。
約言すれば、彼等は遂に彼等対平氏の関係が、根柢より覆されたるを、感ぜざる
能はざりき。
勝「何ういたしまして、
能々の御用だろうと思って飛んで来やしたが、お嬢様がお加減でもお悪いのでがすか」