しかしまたそのほかにも
荒廃を極めたあたりの景色に——伸び放題伸びた庭芝や水の干上った古池に風情の多いためもない訣ではなかった。
まことに、そこ一帯の高原は、原野というものの精気と
荒廃の気とが、一つの鬼形を凝りなしていて、世にもまさしく奇異な一つに相違なかった。
「——魚族弊死し、田園
荒廃し、数十万の人民、産を失ひ業に離れ、飢て食なく病で薬なく、老幼は溝壑に転じ、壮者は去て他国に流離せり。
ここも紫檀の椅子机が、清らかに並べてありながら、冷たい埃の臭いがする、——やはり
荒廃の気が鋪甎の上に、漂っているとでも言いそうなのです。
胎龍の屍体が発見されたのは、薬師堂の背景をなす杉林に囲まれた、
荒廃した堂宇の中であった。
云はば自然の
荒廃の外に、人工の
荒廃も加はつたのだつた。
しかし、この広大な
荒廃のきざしのほかには、その建物はべつに脆そうな有様をほとんど示していなかった。
荒廃と寂寞——どうしても元始的な、人をひざまずかせなければやまないような強い力がこの両側の山と、その間にはさまれた谷との上に動いているような気がする。