色が真蒼で、目も血走り、伸びた髪が額に被つて、冠物なしに、埃塗れの薄汚れた、処々釦の断れた背広を被て、靴足袋もない素跣足で、歩行くのに
蹌踉々々する。
時に大浪が、一あて推寄せたのに足を打たれて、気も上ずって
蹌踉けかかった。
「ワア痛い!」「ウー、いい気味ぢやアよ!」と言ひ捨てて、博士は暗闇の奥底へ
蹌踉とした影法師を蹣跚かせ乍らだんだん消えて行つてしまつた。
差当つて仕事ができないし、やがて幻に烏鷺を睨んで寒中浴衣で
蹌踉と巷を歩くやうになり、早死してしまうからである。
わたしは今までにも数回この老看守には会っているのだが、こんなに彼が
蹌踉としているのを見たのは初めてだ。
びしゃびしゃ……水だらけの湿っぽい井戸端を、草履か、跣足か、沈んで踏んで、陰気に手水鉢の柱に縋って、そこで息を吐く、肩を一つ揺ったが、敷石の上へ、
蹌踉々々。
小児三 ああ、大なものを背負って、
蹌踉々々来るねえ。
自分たちの左右には、昔、島崎藤村が「もっと頭をあげて歩け」と慷慨した、下級官吏らしい人々が、まだ漂っている黄昏の光の中に、
蹌踉たる歩みを運んで行く。
時に大浪が、一あて推寄せたのに足を打たれて、氣も上ずつて
蹌踉けかゝつた。