一生苦労しつづけて死んだ細君の代りに、せめてもに娘にこれが父親の自分が
遺すことの出来る唯一の遺産だといって見せた真剣な対局であった。
「みな土俗の口碑に
遺す昔物語にして、今は彼老狸を見たるものなしといへば、あるべきことならねど、童子の為に記すのみ、しかるやいなや、はしらず」
神の威力の永続を希うて、其呪力ある詞章を伝へ
遺すまい、と努力して来たのであつた。
其の棋品の高下を知らずと雖も、吾が邦人の棋技の彼に伝はりて確徴を
遺すもの、まさに此を以て嚆矢とすべし。
一言で云へば、外国劇の上演には賛成だが、その方法を誤つては悔を後に
遺すであらうといふ意味であつた。
唯だ何れも未開の国で野法図に育つたお庇に歴史に功蹟を
遺すだけに進歩しなかつたが其性質の勝れて怜悧で勇気のあるのは学者に認められておる。
なぜなら、彼等は、自ら生存し、自ら楽しみ、自ら種族を
遺す自由を有しているからです。
「これ紋太夫、云い
遺すことはないか?」作法によって尋ねて見た。