ある朝のこと、このオシャベリ姫は眼をさまして顔を洗うと、すぐに両親の王様とお妃様の処に飛んで来て、もう
おしゃべりを初めました。
すると、意外にも右門がちゃんとその事件を知っていて、あごを伝六にささえさせたまま話に乗ってまいりましたものでしたから、
おしゃべり屋が急に活気づきました。
まことに賛賞どころか、三嘆にあたいする推断というべきですが、だから
おしゃべり屋の伝六の喜び方は、もうひととおりやふたとおりのものではありませんでした。
それを早くも認めたものか、人波を押し分け押し分け右門のあとから駆けつけてきたものは、例の
おしゃべり屋伝六で——
本気で促しましたものでしたから、
おしゃべりとほっつき歩きの大好物な伝六は、犬ころのようになってしたくに駆け帰りました。
ところが、帰ってみると、火もつけないで暗い奥のへやに、るす中例の
おしゃべり屋伝六がかってに上がり込んで、ちょこなんとすわっているのです。
だから、わけても右門思いの
おしゃべり屋伝六が黙っていられるわけはないので、しかし人前でしたから、小さな声でいったものです。
他人のこともいっしょにして口やかましくわめきながら、声から先に飛び込んできたのは、断わるまでもない
おしゃべり屋のあの伝六です。
おしゃべりに似合わず、いたって人情もろいというのがすなわちそれです。