ただ袖中抄を引いて莎草を編みて袋にしたるを
くぐつというとのみあって、その語と傀儡子との関係には及んでいないのである。
しかし「
くぐつ」にしても「
くぐつまわし」にしても、それをその頃において「
くぐつし」と云ったとは思われぬ。
怒濤を
くぐつて舟を漕ぎ出すとき、舟は小山のやうな浪の中に時々かくれて又現はれる、漕手は恐れげもなく愉しさうに漕いでだんだん遠く出て行く景。
旅人がこの銘酒屋の暖簾を
くぐつて現はれたとき、土間の卓には禅僧がお綱と共に地酒をのんでゐる時であつた。
今、お辻の寝棺が悠々と泰松寺の山門——山城屋宗右衛門の老来の虚栄心が、ひそかに一郷の聳目を期待して彼の富の過剰を形の上に持ち来らしめた——を
くぐつて行つた。
コルネイユの「※つき」が稽古にかけられてゐるある日の午後、私は、恐る恐るヴィユウ・コロンビエ座の裏門を
くぐつた。
圓覺寺の惣門を
くぐつて、本殿、洪鐘、それから後山の佛日庵、北條時宗の墓など訪うて、再び舊街道へ出た。
私はちやうど籠球部へ籍を入れて四日目だつたが、指導選手のあとにのこのこ随いて行つて、夕陽丘の校門を
くぐつたのである。