「なす、この観音様に、よう似て
ござらっしゃる、との事でなす。
ここに三抱に余る山桜の遠山桜とて有名なるが
ござ候。
松平のお殿さまからのお差し紙で
ござえますから、きっとまた何か突発したにちげえ
ござんせんぜ」
鳥目で
ござえますから、どうかもっと大きな声をしておくんなせえまし……」
そして
ござのところへきて、これからごちそうをこしらえて人形にやろうと思いますと、大切の大切の人形の姿が、どこへいってしまったか見えなかったのです。
かうなる上は「ろおれんぞ」も、かつふつ云ひ訳の致しやうが
ござない。
それがしは日頃山ずまひのみ致いて居れば、どの殿の旗下に立つて、合戦を仕らうやら、とんと分別を致さうやうも
ござない。
如何に汝が心にもこれにて可しと思へるか」と御尋に、はツと平伏して、「私不調法にていたし方
ござなく、其が精一杯に候」と額に汗して聞え上ぐる。