桜山の背後に、薄黒い雲は流れたが、玄武寺の峰は浅葱色に晴れ渡って、石を伐り出した岩の膚が、
中空に蒼白く、底に光を帯びて、月を宿していそうに見えた。
万丈の塵の中に人の家の屋根より高き処々、
中空に斑々として目覚しき牡丹の花の翻りて見え候。
陽の光が若葉を透して、あざやかな緑色の
中空をつくる。
城趾のあたり
中空で鳶が鳴く、と丁ど今が春の鰯を焼く匂がする。
みるまに山ぎは、はなれて
中空にあがる、いつしか星のかげうせぬ。
その時、日本の五月の朝の
中空には点々、点々、点々、点々。
帆は霧を破る日の光を受けて、丁度
中空を行くやうに、たつた一つ閃いてゐた。
雨は見えない屋根の上へ時々急に降り注いでは、何時か又
中空へ遠のいて行つた。
雪が其まゝの待女郎に成つて、手を取つて導くやうで、まんじ巴の
中空を渡る橋は、宛然に玉の棧橋かと思はれました。
民子の腕車も二人がかり、それから三里半だら/\のぼりに、
中空に聳えたる、春日野峠にさしかゝる。