私はその十五町の道を後で考えれば十分位で駈け
付けたと思いますが、その夜はその歩き馴れた道がいつもの二倍も三倍もの長い道のように思われました。
融通の利かぬ巡査でも見
付けたら、こんな場合でも用捨なく風俗壊乱の罪に問うかも知れぬが、今は尻や臍の問題ではない、生命の問題である。
甚三 お母、木津の藤兵衛の家じゃもう食物が尽きたけに、来年の籾種にまで、手を
付けたというぞ。
店の方でも騒ぎ出して、若い者二人と小僧ひとりがすぐに駈け
付けたが、玉太郎の姿はどうしても見えない。
梅津長門という浪人者を逃がすために、自分の部屋へ火を
付けたとかいう噂もありますが、それはまあ一種の小説でしょう。
その下駄の音を聞き
付けたとみえて、女は待ち兼ねたように内からぬけ出して来た。
実を
付けた若楓の枝の下に池が在つて、底に透く陽光の水の宙に篦鮒が、昨年孵つた一寸ばかりの子鮒を四つほど従へて鰭を休めてゐる。
斯くの如く、余は幹枝に天女の一生を描かせ、一年有余の陶酔を貪りたるものなれば、その終焉の様を記憶すべく、坐魚礁研究所を失楽園とは名
付けたるものなり——