味方はワッワッと鬨を作って、
倒ける、射つ、という真最中。
それには丁度先刻しがた眼を覚して例の小草を
倒に這降る蟻を視た時、起揚ろうとして仰向に
倒けて、伏臥にはならなかったから、勝手が好い。
……雲を貫く、工場の太い煙は、丈に余る黒髪が、縺れて乱れるよう、そして、
倒に立ったのは、長に消えぬ人々の怨恨と見えた。
……動悸に波を打たし、ぐたりと手をつきそうになった時は、二河白道のそれではないが——石段は幻に白く浮いた、卍の馬の、片鐙をはずして
倒に落ちそうにさえ思われた。
……顔を
倒にして、捻じ向いて覗いたが、ト真赤な蟹が、ざわざわと動いたばかり。
——吾々は「扇を
倒にした形」だとか「摺鉢を伏せたような形」だとかあまり富士の形ばかりを見過ぎている。
南は山影暗く
倒に映り北と東の平野は月光蒼茫として何れか陸、何れか水のけじめさへつかず、小舟は西の方を指して進むのである。
これより、「爺や茶屋」「箱根」「原口の瀧」「南瓜軒」「下櫻山」を經て、
倒富士田越橋の袂を行けば、直にボートを見、眞帆片帆を望む。
こゝは英雄の心事料るべからずであるが、打まけられる湯の方では、何の斟酌もあるのでないから、
倒に湯瀧三千丈で、流場一面の土砂降、板から、ばちや/\と溌が飛ぶ。
其重苦しい沈默の中に、何か怖しい思慮が不意に閃く樣に、此のトッ端の
倒りかゝつた家から、時時パッと火花が往還に散る。