群馬県利根郡新治村の最も奥の部落が猿ヶ京で、法師温泉まで二里の間、僅かに数戸の小屋が
峡間に、一、二点在しているのである。
まだ彼岸に入ったばかりであるというのに、もう北羽州の
峡間に臨むこの温泉の村は秋たけて、崖にはう真葛の葉にも露おかせ、障子の穴を通う冷風が肌にわびしい。
今来た路の方を振り向くと、
峡間の底から、大霧は雪を包んで乱舞を始めている、それは噴火口の底から、硫烟が幾筋も縺れ合い、こんぐらかって、騰上するようである。
峡間の湯でなくて、多少見晴しが利く位置にあるからの称えである。
山の
峡間がぼうと照らされて、そこから大河のように流れ出ている所もあった。