ここかしこの山間
渓間にはまだ残雪が深く、おくれ咲きの山桜や山吹とともに何ともいわれぬ残春の景趣を横溢させている。
早春、崖の南側の陽だまりに、蕗の薹が立つ頃になると、
渓間の佳饌山女魚は、俄に食趣をそそるのである。
山は青く秀でて、その下には深い
渓をめぐらしていた。
そうして、廟に近い
渓川のほとりまで登って来ますと、一人の卒が出て参りました。
山間の冷気は夜松浦川の
渓を襲ひ、飽くまで醸しなされたる狭霧は恰も護摩壇の煙のごとし。
魚類はそろそろ
渓川の※洒な細鱗が嗜味の夢に入る、夕顔の苗に支柱を添へ、金魚の鉢に藻を沈めてやる、いづれも、季節よりの親しみである。
路はかなりの大さの
渓に沿って上って行くのであった。
一つは
渓に沿った街道で、もう一つは街道の傍から
渓に懸った吊橋を渡って入ってゆく山径だった。