前面には広瀬川が城の三方をまわって流れ、後は
渓谷をへだてて嶮しい山つづきである。
道はその右手に深い
渓谷を持ち出して、谷底の椴松林帯はアスファルトのように黒く、その梢の枯枝が白骨のように雨ざれていた。
鉤づれのしてゐない鮎といふものは、全く
渓谷の処女で、新らしい、荒い、美しいものである。
近年、都会人に渓流魚釣りの技が普及して、三月の声を聞くともう、魚籠を腰にして東京に近い
渓谷へ我れも我れもと分け入り、重たいほど釣り溜めて帰ってくる。
西南へ下れば天龍峡となり、東北へ行けば、金森山と卯月山との大
渓谷へ出るという郷で、その二つの山の間から流れ出て、天龍川へ注ぐ法全寺川が、郷の南を駛っていた。
石坂家は、大利根川と榛名山と浅間火山との間に刻む
渓谷に水源を持つ烏川とが合流する上州佐波郡芝根村沼之上の三角州の上に、先祖代々農を営む大地主である。
東京近県では上州のほかに常陸の国の久慈川上流に産するもの、また甲州白根三山の東の
渓谷を流れる早川で漁れる鰍も、まことにみごとである。
かつて、西班牙植民史には幻の華となって咲き、南米エセクイボの
渓谷にあるとのみ信じられて、マルチネツはじめ、数千の犠牲をのみ尽くした黄金都市がそれである。