私は善良なるものを意志し希願しつゝ醜怪な
悪徳を書いてしまふといふことを、他の何人よりも私自身が悲しんでゐるのだ。
然し、直接に不協力の意味に於て、人間性の冷酷な写実を
悪徳と見るのは当らない。
休養、娯楽を
悪徳と見る儒学思想は今日も尚日本の家庭を盲目的に支配してをり、よく働き、よく遊べといふやうな分りきつたことすらも、尚一般的な常識ではないのである。
私は結婚もしないうちから、家庭だの女房の暗さに絶望し、娼婦（マノンのやうな）の魅力を考へ、なぜそれが
悪徳なのか疑ぐらねばならないやうなたちだつた。
モラルといふものは、この後に来なければならないのだから、それ自体にモラルがないのは当然で、背徳だの、
悪徳だのといふ自意識もいらない。
軍人達の
悪徳に対する理解力は敏感であって、彼等は女心の変り易さを知らなかったわけではなく、知りすぎていたので、こういう禁止項目を案出に及んだまでであった。
実は怠惰を
悪徳としない美風を徳としているのである。
八月二十五日夜の大火は、函館における背自然の
悪徳を残らず焼き払った天の火である。
したがつて、支配階級の意志に反して国民の利益や幸福を主張したり、それらのために行動したりすることは、すべて憎むべき
悪徳として処刑される。
