料理人は料理で僅少な金を得る生活よりも、ひたすら料理に興味を
持ち続けることの方が幸福ではなかろうか。
「時によりますと夜、あなたが秦皮樹の杖を
持つて、本をよんでお出になりますと、私は戸の外に不思議な物を見ることがございます。
無理をして余裕をつくり、いろいろ楽しい空想をして来たのにと思ふと、読むために
持つて来た本を見てさへいまいましくてならない。
彼は電車へ乗る心算で、十銭
持つて歩きながら、途中で気が変つて、煙草屋へはいると、平然として「往復を一つ」と云つた人間だからこんな事は家常茶飯である。
「この脳髄を
持つてゐた男は××電燈会社の技師だつたがね。
しかし縊死することよりも美的嫌悪を与へない外に蘇生する危険のない利益を
持つてゐる。
芭蕉は俳書を上梓する上にも、いろいろ註文を
持つてゐたらしい。
僕はかう云ふ画に近い小説に興味を
持つてゐるのである。
唯、それが、先生の留学中、西洋で見た芝居の或るものを聯想させる範囲で、幾分か興味を
持つ事が出来るだけである。