「老ドクトル閣下、吾々は今や父祖累代の財宝金銀、あらゆる物をば、全く土芥のごとくに
放擲したのである。
しかし、各方面の同情を得て、収支が償ふだけの予約者があつたならば、凡てを
放擲してその編輯に当り、完全無欠なる小学生全集をつくり上げたいと思つてゐる。
懸賞小説は、さうした作家としての、当然のではあるが、悲しむべき顧慮を、一切
放擲していゝ、書きたいだけを書くもつとも好い機会である。
一方、近代企業の列に伍した劇場経営は、国家の無関心に乗じ、民衆の無批判を利用して、多少の犠牲を伴ふ文化的役割を完全に
放擲した。
運命に服從し、百事を
放擲し」、云々の語を發せしむるに至る。
仕事は
放擲らかして、机の上に肘を突き兩掌でぢくり/\と鈍痛を覺える頭を揉んでゐると、女中がみしり/\梯子段を昇つて來た。
ことにこの一、二年はこの詩集すら、わずかに二、三十巻しかないわが蔵書中にあってもはなはだしく冷遇せられ、架上最も塵深き一隅に
放擲せられていた。