江戸時代のことは、
故老の話に聴くだけであるが、自分の眼で視た明治の東京——その新年の賑いを今から振返ってみると、文字通りに隔世の感がある。
勿論、そのあいだに多少の休みはあったが、ともかく四日も降りつづいたのは珍らしいといわれて、
故老の話し草にも残っている。
村から半道も、木馬路を上つて、一つ家に訪ねた
故老などの、外出還りを待つ間の渋茶が促した、心のやすらひから。
それに就いて、わたしはかつて
故老から聞かされた江戸末期のむかし話を思い出した。
故老の口碑によると、この雪は三尺も積ったと伝えられている。