武田さん自身言っていたように「リアリズムの
果ての象徴の門に辿りついた」のが、これらの一見私小説風の淡い味の短篇ではなかったか。
だが、この言葉はまた、おまえ自身、頑な現実の壁に行き当って、さまざまに苦しみ抜いた
果ての体験から来る自戒の言葉ではあるまいか。
別に意識のあるわけでなし、心を鎮めて伏してゐると、
果ての知れない遠い処に澎湃と溢れ、静かに零れるものがあつた。
しかし、旅支度さえ充分でない上にすぐと悪漢達に追いかけられたりして、姫は全く不安と饑えとで、疲れ
果ててしまったのでした。
山桜は、散り
果ててしまったが、野生の藤が、木々の下枝にからみながら、ほのかな紫の花房をゆたかに垂れている。
それを誰より先に気づいたのは、あの白い広間のまん中に、食さえ断って横わっている、今は老い
果てた母蜘蛛であった。
彼女が自分自身の時間を惜しむ近頃の癖から、もう一つは口やかましい祖父に対する反感から、眠り
果てぬ眠りを装うているのだということは、祖母も母も感付いていた。
そして鉛色の野の
果てからは、腐肥をあさる卑しい鳥の羽音が聞こえてくる。
一番の勝負の
果てぬ間に、宮といふ名は普く知られぬ。
秀林院様(細川越中守忠興の夫人、秀林院殿華屋宗玉大姉はその法諡なり)のお
果てなされ候次第のこと。