ところが戦争このかた、文学の領域では却つてこの問題に対する
精彩を失ひ、独自なる立場を失ひ人の後について行くだけが能でしかないといふ結果になつてゐる。
しかるにここに不思議な事には、反徒の頭目由井正雪を駿府の旅宿で縛めようとした時だけは、幕府有司のその神速振りが妙にこじれて
精彩がなかった。
「旅愁」のなかのチロルの描写のくだりは、とくに
精彩に富んだもののやうに思はれる。
随つて叡山瞰京の事も、演劇的には有つた方が
精彩があるかも知れないが、事実的には受取りかねるのである。
「鐘一つ売れぬ日はなし江戸の春」耽溺詩人其角の句、まだこの方が
精彩がある。
大空はしる雲の白き額うつぶすと言ひては、下の邦なる争ひの急なるを愁ひ、大樹も梢あらはに黄葉落尽のさまを譬へて素足真白き女の神の引照比喩頗る
精彩あり。