が、道行にしろ、喧嘩にしろ、其の出て来た処が、
遁げるにも忍んで出るにも、背後に、村、里、松並木、畷も家も有るのではない。
白い沫が、その上を回転して、両崖の森林を振りかえりながら、何か、禍の身に迫るのを、一刻も早く
遁げたいというように、後から後から、押し合って、飛んで行く。
泳ぎの上手なMも少し気味悪そうに陸の方を向いていくらかでも浅い所まで
遁げようとした位でした。
女中は
遁げ腰のもったて尻で、敷居へ半分だけ突き込んでいた膝を、ぬいと引っこ抜いて不精に出て行く。
……何とかや——いと呼んでさがして、漸く竹の臺でめぐり合ひ、そこも火に追はれて、三河島へ
遁げのびてゐるのだといふ。
……其處いらが靜で、誰も驚かさないと見えて、私たちを見ても、
遁げないんですよ。